ブルーベリーに含まれる色素アントシアニンは、抗酸化物質として知られるポリフェノールの1種で、ブルーベリーやブドウに含まれる紫色の色素です。主要なアントシアニンには、デルフィニジン、シアニジン、マルビジン、ペツニジン、ペオニジンの5種類があります。
ブルーベリーの中で最もアントシアニンを多く含むのが、ビルベリーと呼ばれる野生種です。それ以外の栽培種のアントシアニン含有量は、ビルベリーの半分かそれ以下です。
ブルーベリーの中で最もアントシアニンを多く含むビルベリーは、100g 当たり350mg 程度のアントシアニンを含有しています。1日当たり120g 以上のアントシアニンを摂取すれば眼精疲労などに効果があるとされています。必要以上に摂取されたものは排泄されます。
アントシアニンの効果は即効性に優れ、摂取後4時間ほどで効果が現れ、約24時間持続するといわれています。すなわち効果を持続させるためには、摂取し続ける必要があるということです。
ブルーベリーの目に対する効用が初めて注目されたのは、第2次世界大戦中のこと。当時、イギリス空軍に、ブルーベリージャムが大好物なパイロットがいて、パンを食べるたびに、パンの厚さと同じくらいジャムをたっぷり塗ることを欠かしませんでした。そのパイロットが、夕暮れ時や明け方の飛行から帰ってきた際に、「薄明りでも物がはっきり見えた」と証言したというのです。
この証言に興味を持った学者たちの研究によりて、1960年代~70年代にかけて、ブルーベリーに豊富に含まれる天然色素成分のアントシアニンが、眼精疲労を軽減したり、夜盲症患者の視力を改善する効果を持つことが明らかにされました。現在では、その効果も解明され、イタリア、フランス、韓国、スペイン、ニュージーランドなどでは、アントシアニンが医療用医薬品として使用されています。
【ロドプシンの再合成を助ける】
アントシアニンは、網膜上に存在するロドプシンという色素体の再合成に関与しています。目に光が当たると、網膜の視細胞内ではロドプシンという物質が、光の刺激を脳に伝え「物が見える」と感じます。このロドプシンが分解・再合成を繰り返し、物が見える状態を維持しています。
ロドプシンはレチナールという分子とオプシンというタンパク質がくっついたものです。ロドプシンに光が当たると、レチナールはオプシンから離れていきます。これが刺激となって、視神経に情報が送られ脳に光として感じられるのです。
オプシンから離れたレチナールは、捨てられるのではなく再利用されるのですが、ブルーベリーに含まれる色素アントシアニンが再合成を助けるといわれています。
このレチナールは再合成されるとはいえ、少しずつ消費され減少していきます。これを補うのがビタミンAの働きです。
目を酷使していると、ロドプシンの再合成が追いつかなくなり、必要量が維持できなくなってしまいます。疲れ目や見えにくくなるといった症状が現れてしまいます。ロドプシンは加齢によっても減少することがわかっています。
【抗酸化作用】
人間の眼に対する働きのほか、強力な抗酸化作用があることが注目されています。ガンや脳卒中など、さまざまな症状にかなりの割合で活性酸素が関与しているといわれています。この過剰に発生した有害な活性酸素を抑える働きが抗酸化作用です。この抗酸化作用をアントシアニン色素が強力に持っていることが実証されています。
アントシアニン色素の抗酸化性を、ビタミンE、茶タンニンなどと比較した最近の研究の結果、ブルーベリーのアントシアニン色素は、これらに匹敵するか、または上回る強い活性があることがわかっています。アメリカ国務省人間栄養研究センターのドナルド博士の研究データによれば、米国産の43種類の果実と野菜の抗酸化作用を比較したところ、ブルーベリーが最高値を示し、ナンバーワンであることも証明されました。
このように強力な抗酸化作用があるブルーベリーは、白内障に対しても大きな効果が期待できます。すでにヨーロッパでは、白内障の治療にブルーベリーを素材にした医薬品が使われ成果も出ています。
手術をする以外に決定的な治療法がないとされている白内障に対して、これほど大きな成果が見られたことは特筆すべきことです。日本でもブルーベリーを日常的にとっている人の中には、白内障の進行が止まった、白内障による視力の低下やかすみ目が治った、という声も聞かれます。高齢化社会を迎える今日、白内障の予防効果は朗報であるといえます。
【コラーゲンの合成を促進】
また、アントシアニンはコラーゲンの合成を促進する作用が認められています。 コラーゲンは目の角膜や水晶体に多く含まれる物質です。皮膚の弾力性を保つたんぱく質で、みずみずしい肌を保つのにも不可欠なものです。コラーゲンの合成促進は、傷の回復を早めたり、月経時の痛みを和らげるものです。
糖尿病による合併症のひとつである糖尿病性網膜症の予防効果も注目されています。アントシアニンの一種、デルフィニジンに毛細血管のトラブルを予防する効果があるとされています。アントシアニン色素にはビタミンPのような作用があるといわれています。ビタミンPは、毛細血管透過性を抑制する作用があることが知られています。毛細血管を強化することにより、脳内などでの血管の損傷を防いでいるのです。
米国ではアントシアニンに関して、ガンや老人性認知症の予防効果を示唆する研究結果も報告されています。
【アントシアニンを多く含む植物】
ビルベリー、ブルーベリー、アサイベリー、クランベリー、ブラックベリー、ラズベリー、プルーン、 ブドウ、イチゴ、赤キャベツ、ナス、黒大豆、黒ゴマ、有色サツマイモなど
【食物繊維含有量の比較(g/100g) 】
ブルーベリー 4.1
キウイフルーツ 2.9
バナナ 1.7